絶品日記

正しいカレーみたいなブログ

07/17

マンションに最近いたずらをしている住人がいて、それでふと思い出したので思い出話。

 

私が母親とうまくいっていなかったのは小さい頃からずっとだったけど、特にひどくなったのは中学に入ってからだった。

夜中に部屋で勉強していたら母が入ってきて、私の髪を鷲掴みにしてそのまま頭をぶんぶん振り回して、机にしがみついて抵抗したら今度はたった今勉強に使っていたルーズリーフをくしゃくしゃに丸めて捨てて、机の引き出しを引っ張りだして中の文房具ごと床に叩きつけたというのが特にインパクトがあってよく覚えているけど、とにかく機嫌が悪いと私に当たり散らした。そのへんにあったもので叩くみたいな物理的なこともしたし、みんなお前のことが嫌いで陰で悪く言っているというようなことを何度も言い聞かされた。クズだとか死ねだとかもたくさん言われた。

妹はそういう気配を察して事前に避けるのが上手だった。妹が言うには私と母とは相性が悪いらしくて、私はそういう気配を察することができずに近くに行ったり話しかけたりしてしまうからいつも標的になるのだそうだ。自分が標的にならなくても毎日のようにわめき声が壁越しに聞こえてくるせいで妹もつらいようだった。

 

その程度の攻撃でやられるような人間だと思われるのが悔しかったから私はなるべく平気なフリをしていたし、その時のことがフラッシュバックして気が滅入るようになったのはもっと後になってからだったけど、やっぱりどこか精神が不安定になったのだと思う。

あるとき私はほんの思いつきでトイレに貼られていた張り紙をカッターで切った。委員会の子が作って個室に1枚1枚貼ったらしい「トイレは綺麗に使いましょう」という張り紙を、全部カッターでバツ印に切った。いかにも厨二病という感じだけど、張り紙を切っていると気分が落ち着いた。

翌朝のホームルームで担任のS先生から、トイレの張り紙にいたずらがされていたという連絡があった。その日の放課後に、あれは自分がやったんだということをクラスのOさんに話した。嫌なことがあってOさんが落ち込んでいたから、Oさんもやると良い、気持ちが落ち着くよ、とアドバイスのつもりで言ったのだ。

 

Oさんは、私が家に帰るのがつらいとこぼした時に、だったらうちで時間を潰すと良いと言ってくれた子だった。Oさんの家にはおばあちゃんがいて、私の話を聞いてくれた。私はその場で泣いたんだったと思う。

 

打ち明け話を聞いたOさんは「そんなことはもうやめよう、先生に謝りに行こう」と言ってK先生のところに私を連れて行ってくれた。

K先生は担任の先生じゃない。担任の先生はS先生という先生だったけど、たとえばクラスにいじめがあったら下手に刺激して事態を悪化させてしまうようなタイプだった(あくまでたとえ話だけど)。

K先生は理科の先生だった。テスト範囲じゃないどころか授業で習わないような、でも今までに習ったことや日常生活で得た知識を総合すれば推理できなくもないような問題をテストに1問だけ混ぜたりする面白い先生だった。

 

Oさんは私の家のことはK先生には話さなかったけど、私の様子がおかしいのはK先生にもわかったんだと思う。

K先生は、この件はここだけの秘密にすると言ってくれた。その代わりにダメにした分の張り紙を新しく作りなおせ、というのがK先生の決めた処置だった。

職員会議でも話題にあがっただろうけど、最後まで他の先生にも一切話さなかったみたいだった。

 

謝りに行こうとOさんに言われた時はせっかく気持ちが落ち着く良い方法を見つけたのにどうしてもったいないことをするんだろうと思ったけど、担任のS先生のところじゃなくK先生のところに連れて行ってくれた判断も含めて、Oさんは私のことを助けてくれたのだ。K先生だって恩人だ。

 

そういう幸運な出来事が昔あったのをふと思い出した。