吉野家
いつも前を通る吉野家にどうしても入ってみたくなった。
肉もうなぎも食べられないから入ったことなかったけどもしかしたら私にも食べられるメニューがあるかもしれない。
外にメニュー貼ってない。ネットで調べるか。スマホってほんとにすげえな。
あっ、吉野家じゃなくて吉野屋で検索しちゃった。
吉野屋はひだまりスケッチのちょっとエッチな先生だよ。
違った。ひだまりスケッチのちょっとエッチな吉野屋先生は私の想像上の存在だった。
別にひだまりスケッチの吉野屋先生はちょっとエッチじゃない。
いや、やっぱりちょっとエッチか?
お、カレーあるじゃん。良かった、私も吉野家に入れる。
広い。
広いし空いてる席いっぱいあるのに「あちらの席へどうぞ」とか言われない。
どうしよう。どこに座ればいいんだこれ。
入り口でしばらくぽかんとしてても何も言われない。自分で選べってことなのか?どうしよう。とりあえずこれ以上ここに立ったままなのもまずいよな。
「ご注文は」
座ったら即店員さんが来た。
注文って言われてもまだメニュー見てないよ。メニューくらい暗記してるもんなの?まじで?そういう人しか来ないもんなの?メニューどこだ。やべえ。
あった。
ちっちゃいしなんでこんな隠すような場所に置いてあるんだ。置いてある間隔も広い。これお客さんがいっぱいになったらメニュー足りなくて困るんじゃないのかな。
カレーあった。
あ、やべえ。そこまで頭が回ってなかった。カレーって肉入ってるんじゃね?
「すいません、ここにあるカレーってどれも肉入ってますか?」
店員さんが奥の厨房に聞きに行った。
やばい。迷惑な客になってしまった。どうしよう。
「どれも小さい肉が少し入ってます」
どれも入ってるのか。でもここまで来たらもう頼むしかないよな。一番安いこのカレー頼もう。
このメニューなんて読んで注文すればいいんだ。どこをどう読み上げて注文するんだこれ。
「これください」
読めないからとりあえずメニューを指差す。
「こく旨と旨辛と選べるんですが」
これ選べって意味だったのか。とりあえず辛いほうがいいだろうな。普通に旨辛って言えば良いのか?なんかちょっと恥ずかしい。
「う、旨辛で」
店員さんが厨房に向かってなんか言ってる。注文できた。
「カレーになります」
は?まじで?30秒も経ってなくね?
吉野家ってほんとに早いんだ。キン肉マンの言うとおりだ。あ、ゆでたまご先生と吉野家の関係には触れないほうが良いんだった。
カレーうまい。熱い。30秒で出てきたのにふーふーしないと食べられないくらい熱い。なんでだよ。肉ほとんど入ってないな。助かった。
この店、レジがない。
入り口に一番近いとこ座っちゃったからよくわかんないまま出ちゃいそうだ。うっかり食い逃げになってカラーボール投げられる。どうしよう。なんか立って財布を手に持っていれば店員さん気付いてくれるかな。
店員さん来た。これレジなのか!目の前にあった。全然わからなかった。
これが店内にいくつかあるのか。食べたとこですぐ会計できるのか。すげえ。どうやって会計するんだろう。それなりにお客さんいるのに私の注文覚えてるのかな。店員さんがテーブルから伝票を拾い上げた。後から隣に座った人のだと思ってたけど私のだった。いつ置いたんだよ。全然気付かなかった。
吉野家すごすぎる。
スピーディーすぎてこわい。
こわいけど一人で吉野家に行けるようになって大人になった気分だ。